上腕の痛みに対する早期評価と超音波施術での改善症例~香川県坂出市 せとうち整骨院の症例報告~
肩の痛みにはさまざまな原因がありますが、その中でも「上腕二頭筋長頭腱炎(じょうわんにとうきんちょうとうけんえん)」は、肩の前側に痛みが出やすい代表的な疾患の一つです。
今回、せとうち整骨院に来院された患者様が、初期の段階で適切な評価と整形外科での診断を受け、その後の超音波施術により約1ヵ月で症状がほぼ消失した症例をご紹介します。
1. 患者情報
年齢・性別:50代男性主訴:右肩の前方に痛みがあり、腕を上げる・荷物を持つ動作で特に強く痛む
発症の経緯:週末の草野球で投球後に違和感があり、その後徐々に痛みが増してきた
来院時の状態:肩の前側を押すと強い圧痛があり、肩関節の前方に熱感も認められた。可動域は肩の挙上が120度程度までで、それ以上は痛みで制限。日常生活では髪を洗う動作や衣服の着脱にも支障が出ていた。
2. 初期評価
押さえて痛む場所:結節間溝(上腕骨前面)に限局した圧痛運動やストレッチによるテスト:陽性
肩関節周囲筋の緊張:特に大胸筋・三角筋前部に筋緊張がみられる
その他、よく似た傷害の否定ができた
これらの所見から、上腕二頭筋長頭腱炎の疑いが高いと判断しました。
しかし、腱板損傷や石灰沈着性腱炎など、整形外科的な鑑別が必要な可能性もあったため、整形外科への紹介状を作成し、精査を依頼しました。
3. 整形外科での診断結果
紹介先の整形外科でエコー検査およびX線検査を受けた結果、「右上腕二頭筋長頭腱炎」と正式に診断されました。腱板損傷や石灰沈着などはなく、炎症性変化のみとのことで、保存療法での改善が見込まれるとの見解をいただきました。
この時点で当院での施術方針を再確認し、炎症を抑えながら周囲の筋バランスを整える治療を中心に計画しました。
4. 施術内容
1. 炎症期(来院~2週目)超音波治療を1回10分程度実施。目的は炎症抑制と血流促進。
肩前方部のアイシングと軽度のマッサージで筋緊張を軽減。
痛みを誘発しない範囲での肩関節可動域運動を指導。
この期間は、患部の安静を優先し、投球や重労働を禁止。
2週間経過時点で「日常動作の痛みが半減」しました。
2. 回復期(3~4週目)
超音波治療のモードを変更し、深部の代謝促進を図る。
上腕二頭筋・肩甲下筋・棘上筋の軽いストレッチと姿勢調整(猫背矯正)を追加。
肩の前方偏位を改善するため、肩甲骨の可動性訓練も実施。
3週目には洗髪や着替えがスムーズにできるようになり、4週目には肩の挙上制限がほぼ消失。
痛みの程度は「10→1」にまで減少しました。
5. 経過・結果
施術開始から約1ヵ月で、患者様は「肩の前側の痛みがほとんど気にならない」と訴え、投球動作以外の日常生活動作は完全に可能な状態となりました。
整形外科での再診時にも「腱の炎症所見が改善傾向」と確認されました。
再発防止として、肩の使い方やストレッチ、肩甲骨を中心としたホームエクササイズを継続してもらうよう指導。現在は月に一度のメンテナンス通院を継続中です
6. 考察
上腕二頭筋長頭腱炎は、肩の使い過ぎや姿勢の乱れにより、腱が肩関節前方で摩擦を受けて炎症を起こす疾患です。本症例では、初期段階で正確な評価と整形外科での画像診断を行ったことが、早期回復につながった大きな要因と考えられます。
また、超音波施術による血流改善と炎症コントロール、そして姿勢・肩甲骨の動きの改善を並行して行うことで、再発を防ぎながら自然な回復が得られました。
当院では、単に痛みを取るだけでなく、原因を見極め、医療機関と連携しながら安全に施術を進めることが重要です。今回の症例は、その良い例といえるでしょう。
7. まとめ
初期評価で上腕二頭筋長頭腱炎を疑い、整形外科に紹介診断確定後、超音波施術を中心に保存療法を実施
約1ヵ月で痛みがほぼ消失し、機能回復を確認
原因は姿勢と肩関節前方への負担による腱の摩擦
再発防止には、姿勢改善と肩甲骨の動きの維持が重要
上腕二頭筋長頭腱炎は、早期発見と適切な施術でしっかり改善が見込める症状です。
肩の前側の痛みや腕を上げた時の違和感を感じたら、無理をせず早めにご相談ください。